【公務員の視点】日大アメフト問題にみる日本の組織の危機管理能力のなさ
こんにちは。公務員ブロガー「お父さんのたまご焼き」です。
連日、日大の選手による悪質なタックルの件がニュースで取り扱われいますが、みなさんの意見はいかがですか?
世論は「日大とアメフト部監督は、選手のせいにして、ひでぇヤツだ」ですね。みなさんも同様の意見ではないかと思います。
わたしも今の報道による日大の対応をみる限り、同じ意見です。
しかし、対応次第では日大やアメフト部のダメージは全く違ったものになったでしょう。
なぜなら、今回の件は、まさに組織の危機管理能力のなさが招いた結果だからです。
- 危機管理とはマイナスを最小限におさえること
- 日大アメフト問題は初動対応を間違った
- では、どうすれば危機管理すればよかったのか
- 日大は危機管理の目的を間違えた
- 危機管理は目的を間違わず、素早く初動体制をとることが全て
危機管理とはマイナスを最小限におさえること
危機管理とは「すでに起こってしまったトラブルに関して、事態がそれ以上悪化しないように状況を管理すること」です。
わたしは公務員として防災・危機管理部門にいました。
行政が一番イメージしている危機管理は「自然災害」です。なかでも特に地震です。
地震は、いつ起きるかわからないし、いつ起きたかで対応も異なります。
熊本地震で熊本城の石垣が崩れ落ちましたが、あれ、夜じゃなく昼間だったら、どれだけの観光客が被害だった(最悪、亡くなった)でしょう。
災害に対する危機管理とは、起きてしまったこと(地震)に対して、いかにマイナス(被害、負傷者、死者)を最小にするかが目的の全てです。
ですから、災害がどう起きても、最初の3日間、行政機関はありとあらゆる方法で人命救助に全力投入します。
つまり、危機管理の成否は初動対応が全てです。
災害時よく取り上げられる避難所がどうとか罹災証明書がどうとかは、危機管理という意味では大した問題ではありません。
避難所や罹災証明書などは事前準備できるので、「危機管理」というよりは「リスク管理」の問題です。
日大アメフト問題は初動対応を間違った
危機管理の成否は初動対応が全て、と書きました。
つまり、今回の日大の問題がここまで大きくなったのは初動対応が間違っていたからです。
では、なぜ初動対応を間違ったのか?
それは危機管理の目的を間違ったからで
行政にとっての危機管理の目的は、災害や事件から市民の生命及び財産をいかに守るかが目的です。
今回、日大にとっての危機管理の本来の目的は「教育機関としての日本大学をいかに守るか」です。
要するに、日大は教育機関なわけですから、守るべきは先生や自分たちではなく、まぎれもなく「生徒」です。
この目的を見誤ったことが初動対応を間違った方向に進ませた一番の原因です。
では、どうすれば危機管理すればよかったのか
答えは簡単です。多分、みなさんの思っている通りです。
まずは、起きてしまったこと、つまり違反タックルに対する日大としての謝罪です。
やってはいけない違反タックルなわけですから、理由はどうあれ、違反タックルを犯した側がまずは謝罪すべきです。しかも、本来であれば試合中に謝罪すべきでしょう。そうすれば、試合中に起きたただの違反行為としてすんだ可能性も十分あり得ます。
試合中に謝罪してない時点で、日大側にはおそらくやましいことがあったんでしょうが。
そして、問題の動画が世間の注目を浴びることとなりました。
でも、まだ、日大が生徒を守るという目的を見失っていなければ、この時点でも十分、信頼を回復するチャンスはありました。
それは、すぐに責任者があやまることです。
ポイントは「すぐ」と「責任者」です。世間がヒートアップする前に、1分1秒でも早く、最低でも監督、できれば学長が出てきてあやまるべきだったのです。
一言、「このたびは申し訳なかった。そのような意図はなかったが、結果的に選手に誤解を与えるような指導をしてしまった責任は監督にある。関学、関学の選手、また、タックルをさせてしまった選手に申し訳ない。責任は全て監督にある。」
この言葉を一分一秒でも早く、監督自らが謝罪すれば大事にならず、すんでいたでしょう。
日大は危機管理の目的を間違えた
で、あとはニュースやワイドショーのとおり、日大から出てくるコメントは全て広報から。日大は生徒を守らずに監督を守る(というか、誰も異議を唱えられなかった?)という教育機関としてあるまじき行為で大バッシングを受け、監督辞任で収束を図ろうとしたが、そこでも生徒を守る姿勢が見られなかった。
そして、違反タックルをした選手(生徒)が勇気を出して実名、顔出しで記者会見を開き、監督等からの指示であったと話しました。ほんと、勇気のあることだと思います。一つ間違えば、この選手、自責の念にかられて自殺してもおかしくない精神状態だったと思いますよ。信じていた監督たちに裏切られ、挙句の果てに、自分のせいにされて。
だから、選手は自分で自分を危機管理したのです。危機管理の目的は「自分を守る」こと。目的を間違えなかったからこそ、記者会見い出てくる勇気を持てたのです。目的を見失わず、時期を見さだめて危機管理したおかげで世間を味方につけることができました。組織(強者)に個人(弱者)が立ち向かうには世間を味方につけるしかないのです。
一方、日大は選手の記者会見のコメントに対しても、あくまでコミュニケーション不足だった、生徒の思い込みによるものであったともとれるコメントを出しました。
いまだに、まったく危機管理の目的が見えてません。というか、目的が違っていることに気が付いてないか、気づいていてもそれが言える風土ではないかどちらかでしょう。どっちにしろ組織としては終わってます。
危機管理は目的を間違わず、素早く初動体制をとることが全て
結局、今回の件は日本大学という組織の危機管理能力のなさがすべてです。
これは特別なことではなく、多くの組織も同じじゃないでしょうか。だって、同じような光景をいままで何回も見てきてますよね。
なんで、トップが出てきて、まず謝罪しないんだろうって?
過去に教訓とすべき危機管理問題が起こっているにもかかわらず、同じことを繰り返している日本の組織。
こちらの記事にも書きましたが、結局、他人事なんですよね。自分のところは大丈夫。そんな問題は起こらないって。
http://eggs-of-father.hatenablog.jp/entry/2018/03/13/130028eggs-of-father.hatenablog.jp
以上、よろしくお願い申し上げます。
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(追記)この記事の後のニュースでも、日大はまだ危機管理の目的を見誤ったまま、会見を開いていました。この会見は致命傷となるでしょう。そんな内容でした特に、広報部は目に余る酷さでしたね。あれが日大という組織の真の姿を表しているんでしょう。自分たちを全く客観視できない組織という姿を世間に晒してしまいました。